📌 情報提供を目的とした記事です · 本記事は公開統計・報道に基づくマクロ分析です。売買を推奨するものではなく、一部の月次値は出典ごとに改定値・暫定値の差異がある場合があります。
⚑ PPI · 10-Print Analysis · 2026.05.13

米 PPI 直近10回 — 4月 +6.0% YoY ショック + マクロ含意5つ

2025年8月の +2.6% という底値から、わずか 8か月で +6.0% まで。コンセンサスの +4.9% を 1.1%p 大幅に上回り、MoM +1.4% は 2023年1月以降で最も hot な卸売物価。4月2日に発効した広範な関税が初めてフル反映されたデータが、まさにこの数字だ。グラフ・テーブル・マクロ含意5つ・シナリオ・韓国市場への影響までを整理する。

📅 2026.05.13
📊 10か月の時系列
⏱️ 約15分
🇺🇸 BLS · FRED · CNBC · Reuters
⭐ TL;DR · 一行の結論
🎯 結論: 4月 PPI +6.0% YoY / +1.4% MoM「関税インフレが卸売段階に本格的に浸透した」という単一のシグナル。PPI は CPI に1~2か月先行するため、5月 CPI も hot となる可能性が非常に高い。2026年の Fed 利下げ期待は事実上消滅し、10Y 4.5% 突破・ドル高・グロース株の PER 圧迫が同時進行する可能性がある。韓国への影響は、外国人売り + 為替の 1,500ウォン突破圧力。

直近10回の PPI 発表 — グラフとテーブル

以下は、米国 BLS が発表した Final Demand PPI (ヘッドライン) の直近10か月の時系列だ。2025年10月分は政府機関閉鎖 (2025.10~11) により発表が遅延・省略されたため空欄とし、一部の月の YoY は出典ごとに改定値があるため第1次発表値を基準に表記する。

📈 ヘッドライン PPI YoY % — SVG グラフ

PPI Final Demand · Year-over-Year %
7% 6% 5% 4% 3% 2% コンセンサス 4.9% 3.3 2.6 2.7* 閉鎖 発表遅延 3.0 3.1* 3.5* 3.7* 4.0 6.0 25.7 25.8 25.9 25.10 25.11 25.12 26.1 26.2 26.3 26.4 4/2 関税発効 YoY %
25年後半 (通常トレンド) 26年上半期 (加速) 26.4 ショック (関税の初フル反映) * 一部の月は推定値 — Part 02 出典参照

📊 棒グラフ — 同じデータ、異なる視点

2025.7
+3.3% YoY
2025.8
+2.6% · 底値
2025.9
~+2.7% (推定)
2025.10
閉鎖で未発表
2025.11
+3.0% YoY
2025.12
~+3.1% (推定)
2026.1
~+3.5% (推定)
2026.2
~+3.7% (推定)
2026.3
+4.0% · 3年ぶり高値
2026.4
+6.0% · ショック

📋 フルデータテーブル

YoY %MoM %発表日主要コメント
2025.7+3.3+0.72025.8.14卸売物価が市場予想を大幅に上回る。7月分の MoM は +0.9 → +0.7 へ後日改定
2025.8+2.6-0.12025.9.10YoY が鈍化。10か月中で最も cool。その後8か月で +3.4%p 加速する起点
2025.9~+2.7*+0.32025.10.16MoM はコンセンサスに一致。YoY は一部の資料元で +2.7% が引用される
2025.10n/an/a政府機関閉鎖 (2025.10~11) により BLS 発表が遅延・省略
2025.11+3.0+0.22026.1.14閉鎖後の初の通常発表。Goods +0.9、Services 0.0。YoY が3%台に突入
2025.12~+3.1*+0.4(推定)2026.1.30Nonferrous metals +4.5%、Diesel -14.6%。2025年の年間 PPI が +3.0% で確定 (2024 +3.5% から鈍化)
2026.1~+3.5*+0.62026.2.27閉鎖の影響が正常化した初月。MoM が加速
2026.2~+3.7*+0.52026.3関税 4/2 発効の直前。ベースラインのインフレがすでに加速
2026.3+4.0+0.52026.4.143年ぶり高値(直前の +4.7% は 2023.2)。Goods +1.6、Services 0.0。Gasoline +15.7。コア MoM +0.1 で cool。関税発効直前の最後のクリーンなデータ
2026.4+6.0+1.42026.5.13ショック的な結果 (コンセンサス +4.9% / +0.5% をいずれも大幅に上回る)。Goods +2.0、Services +1.2。4/2 の広範な関税が初めてフル反映されたデータ

* 一部の YoY は BLS の第1次発表値、または本分析による補間推定。出典ごとに ±0.3%p の差異の可能性あり。2025.10 は政府機関閉鎖により第1次発表自体が欠落。

一目で分かるパターン: 2025.8 +2.6% の底値 → 2026.4 +6.0% = 8か月で +3.4%p の急加速。2026.3 → 2026.4 のわずか1か月で +2.0%p ジャンプ。これは通常のインフレ・サイクルではなく、関税・イラン紛争という政策・地政学ショックが卸売段階の価格に一斉に刻み込まれた断絶 (structural break) だ。

なぜ4月に1か月で +2%p ジャンプしたのか

3月までの PPI は 「インフレは粘着的だが、コアは cool」 という両面のメッセージを与えていた。ヘッドラインは +4.0% YoY で3年ぶり高値だったが、コア MoM は +0.1% と市場予想 (+0.5%) を大幅に下回り、Services MoM 0.0% で、Fed が最も懸念する粘着的なサービス・インフレは沈静化していた。これが4月に入って同時に崩れた。

🚨 4月ジャンプの3つのトリガー

  1. 4月2日の広範な関税発効 — トランプ政権の reciprocal tariff が 4/2 に一斉発効。3月 PPI までは関税発効 、4月 PPI からは関税発効 。卸売段階 (中間財・完成品ともに) の価格が一斉にジャンプ。4月 PPI の Goods MoM +2.0%、Services MoM +1.2% — 両領域の同時ジャンプは、一過性ショックの典型的なシグナルだ。
  2. イラン紛争によるエネルギー価格のさらなる上昇 — 3月にはすでに Gasoline +15.7% MoM がヘッドラインの約半分を説明していたが、4月にもホルムズ海峡の緊張継続によりエネルギー価格がさらに上昇。PPI のエネルギー部門がヘッドライン加速の大きな部分を占めた。
  3. 3月の cool なコア・シグナルが一時的だったことが確認された — 3月の Services 0.0% は、Final Demand Less Foods, Energy, and Trade Services ベースで +3.6% YoY。4月には Services +1.2% MoM へジャンプ。Fed が最も心配する粘着的なサービス・インフレが再び息を吹き返した。

🧱 パイプライン・インフレはすでにシグナルを出していた

3月の発表時点で、すでに警戒シグナルがあった。Processed Intermediate Goods +6.6% YoY(2022.11 以降で最大)、Stage 1 Intermediate Demand +6.2% YoY。つまり卸売段階の 手前 の中間財価格がすでに数年ぶりの高値であり、これが結局は卸売段階 (Final Demand) へ流れ落ちてくるのは時間の問題だった。4月 PPI は、そのパイプがついに弾けた結果だ。

構造的な意味: 1か月限りのノイズではなく、中間財 → 卸売 → 小売へと流れるパイプライン・インフレが作動中だ。つまり5月・6月の PPI も hot となる可能性が非常に高く、CPI もまた PPI に1~2か月遅行するため、5~6月の CPI まで段階的な上昇圧力を受ける。

マクロ含意5つ — Fed · 債券 · 株式 · 為替 · 韓国

① Fed 政策 — 2026年の利下げは事実上消滅、2027 H2 まで待機

4/29 FOMC は Powell 議長にとって最後の会合となり、金利は 3.50~3.75% で据え置き維持。Powell の任期は 5/15 終了 (理事としては留任)。PPI 発表の直前、市場は 6月据え置き 98%、12月に利下げ 0%・利上げ 30% を価格に織り込んでいた。4月 PPI +6.0% のショックが加われば、「2027 H2 まで利下げなし」という BofA のシナリオがコンセンサスとして固まる可能性。2026年のいずれかの時点で 0.25%p の利上げが理論的に可能となる領域に入る。

② 債券 — 10Y 4.5% 突破圧力、長短ともに弱含み

米 10Y 国債利回りは 5/12 時点で 4.46% と1年ぶり高値。4月 PPI ショック + 利下げ期待の消滅が結びつけば 4.50~4.70% 突破が可能。2Y も連動して上昇し、短期金利リスクまで再織り込み。住宅ローン 30Y は 7% 以上で長期固着。社債スプレッドは IG は安定、HY は拡大の可能性。「債券は安全資産」という命題が、もう一度試されることになる。

③ 株式 — グロース株のマルチプル圧迫 vs 価格決定力を持つ銘柄の相対的強さ

高い PER を正当化していた「近いうちに利下げ」というナラティブが事実上終了。ただし市場は PPI ショックにもかかわらず、昨日 (5/12) NVDA・MU・TSLA が単独で強さを維持した。つまり (i) AI・半導体のように価格決定力が強い銘柄 + (ii) インフレ hedge (エネルギー・公益・生活必需品) + (iii) バリュー株 (銀行の NIM 改善) が相対的に強く、一般消費財・高 PER のグロース株は圧迫される、という構図が形成される。INTC・AMD・QCOM の昨日 -10/-5/-12% の急落は、PER 圧迫がどう作動するのかを示した最初の一歩だ。

④ 為替 — ドル高 vs インフレ安、短期はドル高優勢

「Fed 利下げの後ずれ → ドル高」という単純なモデルは作動。DXY に上昇圧力。ただし PPI 6% YoY が長期化すれば、ドルの実質価値は弱まる → 長期的な安値圧力も累積。短期 (3~6か月) はドル高優勢 + 長期 (2027~) は緩やかに安値へが一貫した見方。その間、ウォン/ドルの 1,500ウォン突破圧力 + 円/ドルの 160円突破の可能性。

⑤ 韓国 — 外国人売り + 為替 + 半導体デカップリングの三重メッセージ

(a) 外国人の韓国売りが5営業日連続、今月累計 -14.5兆 — PPI ショックで売り圧力がさらに加わる可能性。(b) 為替が 1,500ウォンを突破すれば韓国銀行・為替当局の介入警戒感が浮上し、KOSPI のボラティリティが拡大。(c) しかし SK ハイニックスが昨日 +7.68% で単独急騰し、HBM デカップリング命題を再び立証 — PPI が hot でも、価格決定力のある韓国半導体は米 NVDA・MU の流れをそのまま受ける構図。マクロの弱さ vs ミクロの強さという分岐点が、韓国市場で最も先鋭に作動する。

今後3か月のシナリオ・ツリー (2026.5 ~ 2026.7)

シナリオ A — 一過性ショックとして沈静化 (確率 20%)
関税発効直後の一回限りのジャンプの後、5月 PPI は +5%台へ鈍化、イラン紛争の解消でエネルギー価格が安定。CPI の遅行上昇は +4%台に限定。市場は短期ショックとして受け止め、債券は強含みへ回帰、株式は V 字反発。低確率シナリオ — 関税は一過性ではなく構造的だという点が核心的な弱点
シナリオ B — 新たなインフレ・レジームの形成 (確率 55%)
5~6月の PPI も +5~6% YoY を維持、CPI が段階的に上昇し +4% 後半台まで。Fed の利下げは 2027 H2 へ後ずれ。10Y 4.5~4.7%、DXY 高、グロース株は横ばい・バリュー株が優勢。韓国は外国人売りが累積・為替が 1,500ウォン突破。最も可能性の高いベースライン。AI ビッグテックは価格決定力でデカップリングを継続できる。
シナリオ C — スタグフレーションへ突入 (確率 25%)
PPI が7月まで +6% 以上を維持 + 労働市場が同時に鈍化 (失業率 4.5%+)。Fed は利上げに転じる必要があるが、成長懸念で踏み切れない。2026.Q3~Q4 に GDP 鈍化。最も危険なシナリオ。債券・株式が共に弱含み、金・ドル以外の安全資産が不在。韓国は輸出鈍化 + 外国人売りが同時に作動し、KOSPI のボラティリティが急増。
確率加重の期待値: A 0.2 + B 0.55 + C 0.25 → 「新たなインフレ・レジーム + 一部スタグ・リスク」が加重平均。つまり市場価格には、まだシナリオ B が十分に織り込まれていない可能性がある。5月 CPI (6/11 発表)・6月 FOMC・イラン紛争の推移が3つの主要な分岐点だ。

次の3つの分岐点 — 何を見るべきか

📌 ウォッチ 1 · 5月 CPI 発表 (予定 2026.6.11)

4月 PPI +6.0% YoY が CPI に1~2か月遅行で流れるかを確認する最初のデータ。5月 CPI のヘッドラインが +4.0% YoY を超えれば、2027 H2 まで利下げなしシナリオがほぼ確定。コンセンサスは +4.0% 前後と予想される最中。CPI が hot なら 10Y 4.7% 突破が可能。

📌 ウォッチ 2 · 6月 FOMC (2026.6.17~18)

新議長 (7/1 就任予定) の人選 + 6月 FOMC の dot plot の変化が決定的。点図表の中央値が 2026 の利下げ回数 0回 まで下がれば (現在の dot plot は1~2回)、市場価格がもう一度再調整される。dot plot が利上げまで示唆すれば短期ショック。

📌 ウォッチ 3 · イラン紛争 + トランプの中国訪問 (2026.5.13~15)

イランとの和平交渉が進展すれば原油安 → PPI ヘッドラインの負担が緩和。決裂すればホルムズ海峡の緊張が再燃し、追加ショック。同時にトランプの中国訪問 (5/13~15) + Jensen Huang の同行 → H200 交渉が副次効果として作動。3つが同時に 5/15~17 の間に一気に決まる可能性

📌 ウォッチ 4 · 6~7月 PPI の連続性

5月 PPI (6/12 発表予定)、6月 PPI (7/15 予定) が5%台後半を維持すればシナリオ B が確定。どれか一度でも +5% 以下に落ちればシナリオ A の可能性が復活。

📌 ウォッチ 5 · 米国の労働市場 (5月 NFP 6/6 発表)

失業率が 4.5% を超え始めると、シナリオ C (スタグフレーション) の確率が上昇。賃金上昇率・時間当たり賃金が PPI と同時に上がるかが核心。

韓国投資家の視点 — 何が変わるのか

PPI ショックは米国のマクロ・イベントだが、韓国市場には4つのチャネルで流れ込んでくる。昨日 5/13 に KOSPI が 7,844 という史上最高値をつけたダイナミックな流れの、次の段階を決める外部変数だ。

韓国視点の核心: マクロは弱く、ミクロ (半導体・AI インフラ) は強いという分岐構造が、より鮮明になる。単純な指数ベットよりも、(i) HBM・AI 半導体、(ii) 電力・送電インフラ (米国 PPI が hot でも変わらない AI capex)、(iii) インフレ hedge (原材料・金) への分散 + 為替・金利に対するマクロ hedge の組み合わせが、5月~7月の KOSPI のボラティリティに合ったポジショニングだ。

一行で — 「一過性のノイズではなくレジーム・チェンジ」

PPI 一度の hot な結果でマクロ・シナリオをすべて覆してはいけないが、4月 PPI +6.0% YoY は、一過性のノイズと見るのが難しい4つのシグナルが同時に作動した結果だ — (i) 4/2 関税発効直後の初フル反映、(ii) Goods・Services の同時ジャンプ、(iii) 3月にすでに Stage 1 中間財価格が +6.2% YoY でシグナルを出していたパイプライン・インフレ、(iv) コンセンサス +4.9% を 1.1%p 大幅に上回った推定誤差。

この4つが同時に崩れない限り、「2025年のインフレ鈍化トレンドが、2026年に入って関税・イラン紛争により反転した新レジーム」という仮説をベースに置くのが合理的だ。シナリオ B が加重平均で最も近い理由である。

5月 CPI (6/11)・6月 FOMC (6/17~18)・イラン紛争の推移の3つが、今後30日以内にシナリオ A/B/C を分ける核心的な分岐点であり、韓国投資家は、マクロの弱さをヘッジしつつもミクロの強さ (HBM・AI インフラ・電力) を取りこぼさない、二本立てのポジショニングが、5~7月の KOSPI のボラティリティに最もよく合う。

🎯 一行の結論: 4月 PPI +6.0% YoY は単なるインフレ指標の一つではなく、「関税・イランが生んだ新たなインフレ・レジームの最初の公式データ」だ。市場価格は、まだこのレジームを十分に織り込めていない可能性が高い。5月 CPI が次の検証台だ。